インドでは列車を使って旅をすることが多い。
効率よく、格安で旅ができる。貧乏旅行の強い味方だ。
そんなインドで体験した思い出。
2010/03/13
Bodh Gayaでのチェコ人の友人Soniaとのルームシェアの日々も終わり、
次の目的地Pushkarに向かう、そんな一日だった。
いつものように夜行列車の切符を買おうとするがなんと満席。
どうしても移動したいためキャンセル待ちを了承して購入。
インドではWaiting Listというものがあり、
乗車する駅のホームに、電車が到着する直前に紙が掲載される。
ListのNo.1から順にキャンセルがあれば割り当てられるということだ。
運によって席を貰えたり貰えなかったりする。つまりWL(No.)50でも
大丈夫だったり、逆に週末や人気の電車はWL5でも乗れなかったりする。
前置きがとても長くなってしまったが、今回はそんなWLでの悲劇と貴重な体験の話。
その日のWLは30。何とも言えないポジション。
ホームでListを見る。自分の名前は見当たらない。
インドで初めてのキセルを決断。
インドでは夜行列車に乗車後、車掌(通称:T.T)が切符のチェックに来る。その時に賄賂として
300Rsほど渡せば席が貰えるという裏技が存在する。
仲良くなったインド人にもこのやり方を教わり、
「全然余裕だよ〜。皆やってることだよ〜。」
との言葉をもらい、決断。
いざ、Bodh Gayaから乗り込む。そしてやってきたT.Tにドキドキしながら言う。
「これ(金300Rsを見せ)でどう?席ちょうだい。すっごい眠いんだ。」
若くてノリが良さそうなT.Tが答える。
「お前切符無いのに何で乗ってきてるんだよ!
次の駅で降りろ。」
全く話に聞いてなかった車掌の正義感が強いバージョン。笑
席が無い俺はトイレの前のデッキに強制的に座らせられた。
呼吸ができないぐらい臭く、床が汚い。次の駅までだから我慢しようと思ったが、
よく考えたらこれは夜行列車。
近くにいたインド人に次の駅にいつ着くか聞く。
そして下手くそな英語で、パッチリした目で教えてくれる。
「about 2 hours.」
まさに絶望に変わった瞬間だった。
そして次の駅(Mugar sarai St.)で降ろされる。
一人ホームを歩きどうしようか困っていると、10人ぐらいの人混みを発見。
どうやら俺のように席を確保できなかったインド人達が
どうにか席を貰おうとT.Tに懇願している所だった。
近くで見ていると、こんな夜中に一人でいる外国人を
皆不思議に思い、声を掛けてきた。
事情を説明し、おっさん達と一緒に輪に加わる。
すると、もはやキレてる一人のおっさんがT.Tに
「こいつは観光客だからこいつだけには席をあげてくれ」
と言ってくれる。皆「そうだ、そうだ!」と言ってくれるので思わず、
「明日の昼に日本に帰る飛行機が出ちゃうんだ!」
と嘘をつきお願いをする。もはやこの状況が楽しい。
T.Tはなおもダメだと言うが、おっさん達が強引に俺を列車に乗らせる。
「インドは好きか?気を付けろよー!」と皆言って手を振ってくれる。
列車が発車し、先程のT.Tが来る。
無表情の顔付きを見て「終わった。」と感じた。
「Come.」
冷たく言われ背中をついていく。そして一つのベッドを指差し、
「Sleep.」
信じられない瞬間だった。
そこは乗務員車両でもちろん旅行者は俺のみ。
ようやく寝床を得て眠りにつく。すでにAM3:00。
翌朝スタッフの兄ちゃん達が寝起きに俺の顔を見て驚きまくってる。
「何でここに変な外人いるの??」
でも、皆優しくてお菓子をくれたり毛布をくれたり、
自分たちの広いベッドに交換してくれた。
そして例のT.Tに呼び出しをくらう。
「今からこの列車のBossと面談だ。」
緊張が走る。
個室に入り、Bossに真実と嘘を交えながら事情を説明。
何とか少しの罰金(約600円)で許してくれた。
その後はT.Tたちとめちゃくちゃ仲良くなり、
何故か全て無料で朝飯やジュース、デザートまで貰う。
乗務員車両のテーブルでT.T3人と日本人が仲良くお喋り。
こんな旅行者は前代未聞だろう。
ふと突然、
「タバコ吸う?」とBossに聞かれる。
インドでは車内の喫煙は固く禁止され罰金も高い。
「禁煙でしょ?」と答えると
「大丈夫だよ。
だって俺がここで一番偉いもん。」
面白すぎる。
二人並んで仲良くタバコを吸う。
車内では写真を見せたりヒンドゥー語を教えてもらったりし、
ようやく到着。
皆で写真を撮りたかったが、絶対にダメだと言われた。
この車両の中は撮影禁止だし、お前を入れたなんてバレたらヤバい、と。
駅に近づくと皆仕事モードへと変わり、
顔が険しくなる。
こんな日本人を入れてるからなおさらだ。
ホームに一緒に降りると、先ほどまでふざけあっていたT.T達が
誰も話してくれない。
でも別れ際、Bossがさり気無くホームで
いたずらっぽく俺にウインクしてきた。
皆と別れた後 階段を登る前に
ふと振り返ってみるとT.T達が笑顔で手を振っていた。
感動で泣きそうだった。
こうして長すぎる一夜が終わった。
そんなこんなでPushkarに到着。
One Response
島田俊一郎
間違いなく世界初の心温まるキセルストーリー。完全に素敵。あゆむ会いたいぜ。メキシコも来いよ絶対。